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マツダRX-VISION 最速モデリングレビュー!!(のつもりではじめたものの・・)
お久しぶりです。
デジタルモデラーの福山です。
技術は使わないと錆付くもの。
モデラーたるもの、日々の鍛錬を怠ってはおれません。
ましてや後輩たちの成長著しい昨今、あぐらをかいていては寝首をかかれてしまいます。
(椅子でのあぐらはお行儀も悪いですしね)
我々デジタルモデラーの仕事は、デザイナーの想いを形にすることです。
私は、自分が想い描く形を限りなく100%再現できることが
モデラーとして最低限必要なスキルかと思っております。
なぜなら自分の想いを形に出来なければ、人の想いを形にすることなど出来ないからです。
大風呂敷を広げてしまいましたが、想いを正確に再現する訓練として
実物の模刻モデリングは大変有効かと考えております。
実際に存在するものがモチーフなので、再現性の評価がしやすく、
立体及び意匠意図の観察力も養われると思います。
百聞は一見しかず、もとい一モデリングにしかず!
どれだけ眺めるよりも、モデリングすることがモチーフへの理解を深める一番の方法でもあります。
さて、上記の理由から時間を見つけては模刻モデリングを行っているのですが、
今回は2015年東京モーターショーで一目惚れし、
世間的な評価も高かった「マツダRX-VISION」をモチーフに選択いたしました。
(ちなみに私事ですが、RX-VISIONの市販化を待ちきれずに、最近RX-7を購入してしまいました。最高です)
当初、モーターショー視察直後の興奮冷めやらぬ高いモチベーションの中、
誰よりも早くモデリングしてしまおうと、鼻息荒く造り始めたものの
忙しさを隠れ蓑にすっかり時間ばかりが過ぎてしまいました。
本来ならば完成したものを披露するのが理想ですが、
このまま日の目を見ぬままHDの肥やしにしてしまうのも可愛そうですので
デジタルモデリングの流れの御紹介を兼ねて、ここにひっそりとアップしたいと思います。
モデリングと一言で言いましても、実際の業務においては色々なアプローチがありえます。
今回は図面の無い写真情報からの実車模刻ということで、
アプローチのうちのひとつとしてご理解いただければと思います。
まずは入手できうる限りの情報の収集からです。
具体的には、自動車の場合はカタログの4面図や寸法がわかる諸元表などがあると良いですが、
今回はコンセプトカーということで図面がありませんので、公表されている寸法を参考にします。
これらの寸法をモデリングソフト上にガイドとして配置します。
後は写真の収集ですが、今回は実際にモーターショーで撮影した写真がありますので、
それらを主に参考にしながら、webで入手できる画像も最大限活用します。
集めた情報を元にモデリングスタート。
私の場合は、まずは難しいことを考えずに大まかなところから作っていきます。
感覚としてはクロッキーデッサンのようなラフ画のイメージです。
ざっと全体を作ります。
多くの自動車は、前から後ろまで区切りの無いひと塊の造形のため、
どこか一箇所を変形するとその影響は車体全体に及びます。
よって、いきなり一部を作りこむのではなく、全体のバランスに注意しながら進めていきます。
ここまでで大体8時間ほどです。
写真と見比べて調整を繰り返します。
調整はひたすら線や面を原始的に動かして行います。
時に大胆に、時に繊細に(0.01ミリ!)
ソフトは年々高機能になっていますが、主に使っているのは昔から変わらない一部の機能だったりします・・
ここまでで大体15時間。
パッと見はあまり変わってませんが地味に調整が行われています。
色なんかもつけてみて、雰囲気を盛り上げます。(←これ重要)
(ちなみにこの時点で2015年11月。そのままいけば世界最速で公開できたかと思います。えぇ、犬が吠えてます)
面の丸み具合を観察する手段として、映り込みや反射による印象に頼ったり、
光源や環境に左右されない見切り線(部品間の隙間)から読み取ったりします。
丸く見える車体も角ばった状態で作っていき、角は後で丸めるのですが、
時々バランス確認のために角を丸めて様子を見たりします。
ちなみにこの仮の角を「相貫」と呼びます。
相貫の状態でモデリングすることで、
バランスの調整が行いやすくなったり、角の丸み具合も自由に変更できるメリットがあります。
(学生や新人モデラーが最初に躓くのがこの相貫という概念の理解だったりします)
相貫状態とは、複雑な立体を最小の単位まで分解した状態とも解釈できます。
~そして半年後~
料理番組なら完成品を披露するところですが、まだ終わってません・・
こちらが現在の姿です。
ある程度バランスは整えました。
(期間があきすぎたため作業時間がわからなくなってしまいました・・)
先述したように大きな変更を後から加えると全体的な調整が必要になるため、
骨格としては変更が必要ないレベルまで調整しておきます。
実際の業務においては、この調整の期間が作業の大半を占めるケースが多いです。
(正確な情報からはじめるほど、この期間は短縮できる傾向にあります)
作っては直し、検討しては作りの繰り返しです。
よっていかに躊躇なく作ったデータを破壊できるかがモデラーには求められます。
モデラーよ、Mであれ!
あまり根詰めても疲れてしまうので、
時々このようにリアルタイムレンダリングソフト(弊社ではAutodesk Showcase)を使って、ぐるぐる眺めて楽しみます。
この時ニヤついててもスルーしてあげてください。
(作業が進まないのはこれのせいかも知れません・・)
今回は実車の模刻なので明確な正解が存在しますが、
実際の業務の多くの場合では、まだ定まっていない正解を目指して
デザイナーとともに試行錯誤を繰り返しながら形を産み出していきます。
それは時にスムーズに、時に(主に)果てしない泥沼を這い進むような果てしない作業なのです。
さて、データのほうはここから細部を作りこんだり、角を丸めたり、
ランプやミラーなどの部品を作りこんでいくのですが、それはまた別の機会に・・
次回はあるのか!? 乞わずご期待・・。
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