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【自動車のコンセプトモデルができるまで】
ヒアリング、コンセプト立案、デザインなどのプロセスをご紹介。
デザインマネージャーのヲカモトです。
このたびエンビジョンは、内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の研究開発プログラムの1つ、東京大学の伊藤耕三教授がプログラム・マネージャーを務める「しなやかタフポリマー」を用いたコンセプトカーのデザイン開発にご協力させて頂きました。
<しなやかタフポリマーについて>人類の発明した素材で最も用途が広いとも言われる便利なポリマー。しかし、薄くすると壊れやすく、厚く硬くすると脆くなる性質が課題だった。本プログラムは、従来の限界を超える薄膜化と強靱化を同時に達成する「しなやかなタフポリマー」の実現を目指す。タフネス性・柔軟性・自己修復性(熱や光で元に戻る)という特徴をもつタフポリマーは、自動車部品や輸送機器を飛躍的に向上させるブレークスルーにつながる。さらに高分子材料が利用される産業全般に広い波及効果が期待され、将来的に安全・安心・低環境負荷という社会的ニーズに貢献する。 |
これら素材の特徴をいかに「乗り物(クルマ)」として表現するかが、我々デザイナーの役割です。
エンビジョンでは志満津デザインディレクターを筆頭に、若手を中心(自分は若くないけど)としたプロダクトデザインチームによって、コンセプト立案からイメージモデル製作まで、クルマとしての魅力を持ちながら新しい素材を生かしたスタイリングを提案させて頂きました。
普段お見せする事が出来ないエンビジョンのデザイン活動の一例として、簡単ではありますがご紹介いたします。
大まかな流れとしては
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といった感じです。
打ち合わせ~コンセプト立案
様々な情報を元に意見を出しながら、何度も打ち合わせを行うことは非常に重要です。
パッケージ・スタイリングに入る前に、この段階で大まかな方向性(骨格)を決めていきます。
ラフデザイン、アイデア展開
まずはイメージを膨らませます。打ち合わせ内容・基本コンセプトを考慮しながらラフスケッチを描いていきます。まずは各自たくさん描きます。
最近ではアイデアスケッチもPCで描く人が多いですが、自分の場合アイデアはアナログスケッチ(メモ帳&ボールペン)で描くようにしています。この方が気楽に描けて良いアイデアが出ることが多いです。電車に乗ってる時などはiPhoneのスケッチアプリ等でラフスケッチを描いたりもします。便利な時代になりました。
これらのスケッチを元にさらにヒアリングを重ね、デザインの方向性を徐々に定めていきます。
<ラフスケッチ一例。まだまだたくさんあります>
デザイン決定~プレゼンテーション
山のように描いたスケッチの中から選定されたアイデアがこちらです。
※ちなみにこのクルマは「前、後」の概念がありません。前後進む方向で違う性格の走り方ができます。
<進行方向JOURNEY: 自動運転によるリラックスモード(超大型ウインドウで旅を楽しむような感覚)>
<進行方向SPORTS:コックピットを連想させるタイトなソロシート(ドライバーが運転を楽しむ)>
様々な方向性を探りながら試行錯誤を繰り返し、最もコンセプトにふさわしい案を最終アイデア(レンダリング)として提案します。この段階までは2Dのスケッチですが、できるだけ明確にコンセプトを表現できるように描きます。
ちなみに絵を描くアプリはPhotoshopですが、最近ではClip Studioも多用します。それぞれ特徴&メリットがあるので使い分けて作業しています。
3Dデータ化
このスケッチを元にいよいよ3Dデータの作成に入りますが、2D(絵)から3D(立体)にするのはそう簡単ではありません。パッケージレイアウト(寸法、乗車姿勢、バッテリー等の位置など)を検証しつつ、絵では曖昧だった箇所や、ディディールなどをCGチームと共に作り上げていきます。最終的には立体になるわけですから、「絵よりも魅力的に」が絶対目標です。
ちなみに、CGチームのツールはAlias AutoStudioです。デザイナーには高くて扱えないハイエンドアプリなので、自分達はもっぱらRhinocerosですけど。
<何度も何度も修正を繰り返して熟成させていきます>
エンビジョンの優秀なCGチームメンバーのおかげもあって、イメージ通りのデータが完成しました。
可能な限りリアルな動画も製作し、イメージを共有していきます。
<このレベルの動画もあっという間に出来てしまいます。凄いですね>
いよいよイメージモデル製作
完成したデータを元に、熟練の職人による立体化。今回は1/24スケール(手のひらサイズ)での作業です。近年では3Dプリンターの発展により、誰でも気軽に模型などが製作できる時代ですが、やはり職人の腕には到底及びません。圧巻の出来栄えです!!
ここでも職人との打ち合わせが重要で、クルマの特徴や印象、車体の色味など、イメージを共有して初めて魅力的なモデルに仕上がります。コミュニケーションは非常に大切ですね。
<とても1/24スケールとは思えないクオリティーです!>
<このクルマは外装と内装が一体構造なので、モデルの製作難易度は相当高いです>
選定された初期のイメージを踏襲しつつ、とても魅力的なクルマに仕上がりました。伊藤プログラム・マネージャーを始め、関係者の方々もきっと喜んで頂けたと思います。自分たちも大満足です。
「しなやかなタフポリマー」を実現した将来、このクルマが街を走ってくれると嬉しいですね。(東京オリンピックもありますし!)
最後に
デザインという作業は「絵を描く、モノを作る、スタイリングする」という事だけが注目されがちですが、実際は「クライアントとのコミュニケーションが一番長く重要な作業」だと思っています。綿密な打ち合わせ・ヒアリングを行い、お互いの考えを理解し共有することでコンセプト立案もデザインもやりやすくなり、結果として魅力的な提案ができるのだと思います。
今回は1/24という小さいモデルのご紹介でしたが、もちろん1/1(実物大)のモデル作業を行うケースもあります。ご紹介出来る機会があればまたご報告いたします。
また、今回ご紹介したようなコンセプトカー開発のほかにも、エンビジョンに何か作ってほしい!一緒に何か作ってみたい!とお考えの方はお気軽にお問い合わせ下さい。
ではまた!